中国番組にみる広告とコンテンツの境界線(そんなの無い)

中華コンテンツを見ていて目につく広告手法について、少し説明しておきたいと思います。日本ではあまり目にしないかもしれませんが、中国では非常によくあります。
例えばこんな感じ。 
「火星情報局」という中国(大陸)の人気バラエティ番組では、番組タイトルの隣に『CLEAR清场』というシャンプーの商品名が常時出て来ます。かつて日本で放送されていた『ライオンのごきげんよう』みたいなものでしょうが、そんなさりげないものにとどまりません。

番組の中は広告だらけ

写真のように本編中に、視覚に入るところに商品がやたらと並べて置いてあります。冠スポンサーはこのシャンプーの会社のようですが、他にカクテルの会社、携帯会社も参入しています。
ゲストの隣にサイドテーブルが置かれ、その上にRIOという瓶のカクテルが並べてあり、ゲストが喋るたびに映り込みます…。
自撮りの仕方を各ゲストが話したかと思えば…
そのまま、VIVOという携帯がいかにキレイに撮れるか、という宣伝になります。もう、広告だらけです…。

プロダクトプレイスメントという手法

オンデマンドやストリーミングでの視聴が増えたことで、テレビCMのあり方も変わってきています。かつてのように時間になったらテレビをつけ、番組の合間に強制的にCMを見せられる習慣が減ってきています。ネットなどでの視聴となると、つまらなければいつでも早送りしてスキップすることできるうえ、たくさんのコンテンツが溢れる中、ノイズが多いとユーザーは視聴そのものを継続しません。本編に関係のない広告を無理やりコマーシャルとして流しても商品の魅力が伝わらず視聴者にとってノイズになってしまうだけです。こうしたことを避け、代わりに広告そのものをコンテンツ本編に埋め込んでしまう手法が中華メディアでは目立ちます。

例えばドラマの中で、やたらiPhone 6が鳴り、それがアップになるシーンが複数回ある。とか。特定メーカーのパッケージがついたヨーグルトを飲むシーンが複数回登場する、といったものは実は広告なのです。これをプロダクトプレイスメント(product placement)と呼びます。もっとも、プロダクトプレイスメントを最初にやったのはハリウッド映画でしょう。タバコ産業とハリウッド映画の結びつきや、コカコーラやペプシなんかが映画の中で登場するのがわかり良い例だと思います。 

こうしたコンテンツに広告が入り込んでしまうのは、マテリアリズムが進んだ資本主義経済のアメリカ的広告手法だ、とばかり私は思ってましたが、中国メディアでも非常に盛んなのです。

歌って踊って…商品を宣伝

バラエティ番組「火星情報局」のプロダクトプレイスメントの極みはこちら。キャストが歌って踊って、商品を宣伝します…やり過ぎだろ…。

プロダクトプレイスメントのメリットと批判

コンテンツ制作者側にとってみれば、プロダクトプレイスメントは広告スポンサーがつくことで資金調達になるというメリットがある一方、何らかのストーリテリングをしていく作品中に、本来のあらすじや設定と関係のない商品が登場することで、物語の本質が歪んでしまうなど、重商主義に走りすぎて魂を抜かれてしまうような可能性がある点がデメリットとされます。また、一般にメディアにおいて、広告と事実や情報は分けて伝えるものであるといった原則や、公正な広告が求められるといった倫理的側面において、こうした手法が批判されることもあります。

公正な広告のあり方

日本やアメリカの場合、公正な広告のあり方について、自らの信頼性を保つため、業界団体が独自に設定した上で、視聴者から不満があれば第三者機関に報告され審議するような仕組みになっていると言えるでしょう。一方、内部規定を設けないネットメディアにおいては、ニュースやインタビューとして記事になっているものも、実は広告だという場合があります。編集の独立性を保つためにも、広告なのか編集ページなのか、事実を扱う媒体であれば線を引く必要があるとして、〈PR〉といった注書きがされるべきだ言われています。まともな媒体であれば、広告だということを、ごく片隅にではありますが、明記しています。

一方、個人メディアだと、いわゆるステマ(ステルスマーケティング)が行われていてもそれが読者にとって自明でないことがあります。芸能人や人気ブロガーの中には、ブランドなどからお金をもらって、特定の商品をブログで取り上げたりしているケースがあります。ただし、彼らが個人のブログで何をしようとも、公共の電波を使う放送とは違って、説明責任を果たす必要もなく、透明性の義務もないので、読む側が賢くなるしかないでしょう。

また個人ブログ以外にも、いわゆるオウンドメディアという手法においては、情報を提供するメディアのように見せておいて、特定のサービスや商品を促進するために、近しい情報や関連性のあるテーマの情報を流し、流入してきたトラフィックを、宣伝に結びつけようというものもあります。例えば、バナナを流通させ販売する会社が、健康情報サイトを作って、健康に関する有益そうな様々な情報を提供しながら、その中にバナナの効能について取り上げた記事を織り交ぜ、場合によっては本社サイトの購入ページに誘導する(しない場合もある)といったものです。こうした情報メディアが中立的なものかそれとも広告なのか、というのを判断するには、運営会社を確認すれば良いのですが、普通の人は記事を読むだけでそこまで気をつけて見ないかもしれません。ということで、広告とコンテンツが混在するのは、なかなかトリッキーなものなのです。

広告費は削減傾向の日本、アメリカはネット配信のコンテンツ内に広告

日本のテレビ放送の場合、具体的にどういった制限があるのか私は知りませんが、あまりプロダクトプレイスメントが目につかないように感じます。一部のバラエティ番組でやっているインフォマーシャル的なものくらいでしょうか。それとも、もっとあるんでしょうか。そもそもブランド名や商品名があまり本編に登場しません。経緯として考えられるのは、日本のテレビ放送は広告収入がネットに抜かれていて、さらに日本の企業が年々、広告費を削減しているということがあるでしょう。というのも、プロダクトプレイスメントは、かなりお金がかかる広告費だからです。

これに対し、アメリカ、中国では大型スポンサーによる本編中の広告が非常に目に付きます。アメリカのNetflixで独自に制作配信している「フルハウス」の続編「Fuller House」でも、プロダクトプレイスメントの手法を用いた様々な広告が本編中登場しているようです。ぜひ、今度テレビや映画を見るときにブランド名や商品の登場を気にして視聴してみてください。

嫌気がさすかもしれませんし、その商品が欲しくなるのかも…!

参考: 火星情報局 Youku http://i.youku.com/i/UMzMxNjc4NTE0NA==/videos
写真: 火星情報局 スクリーンショット

免責: 火星情報局はYoukuが共同制作、独占配信のはず。Youtubeチャンネルは何万回も再生回数がありYoukuでの閲覧を促すウォーターマークが入っていたから公式っぽく見える。ただ実際はどうなのか私には判別不可能。なのでYoukuから見るのをお勧めします。
なおAmeba Owndの編集画面では動画のリンクでYoukuの最適化をしてくれなくてHTML埋め込みがエラーになってしまうので、あえなくYoutubeのリンクを載せています。

中国コンテンツこれ観たよ

中国語ができない私がアプリやネットテレビなどでたまたま視聴して面白かった中国のテレビ番組や映画について紹介します。

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